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2023年07月10日
「アイデンティティ」という言葉を見聞きしたことがあるものの、具体的な意味がよく分からず、普段の会話で使うことはほとんどないという方は多いでしょう。
アイデンティティは外来語であり、英単語の「identity」が由来となっています。日本ではアイデンティティと口にするシーンが少なくても、英語圏ではあらゆるシーンで用いられる言葉となるため、英語力を伸ばしたいという場合はその意味を深く理解しておくとよいでしょう。
そこで今回は、アイデンティティの概要や英語表記から、正しい使用例、関連語まで徹底解説します。
目次
アイデンティティは外来語であり、「自己同一性」と訳されることの多い単語です。しかし、実際には2つの意味があるため、シーンによって使い分ける必要があります。また、オリジナルとなる英単語においても意味はほとんど同様ですが、前後の文章によって具体的な意味やニュアンスも違ってくることに注意しましょう。
単語1つで複数の意味をもつ英単語はほかにもありますが、特にアイデンティティがもつ複数の意味はいずれも抽象的なイメージがあるため、適切に使い分けるにはその意味を深く理解しておかなければなりません。
そこでまずは、アイデンティティの英語表記・国語辞典に載っているアイデンティティの具体的な意味、さらにアイデンティティを提唱した人物について紹介します。
アイデンティティのオリジナルとなる英語表記は、「identity」です。identityという英単語は、大きく異なる2つの意味をもっています。
identityの意味(1)個性・主体性・独自性
identityは、自分という存在の個性や主体性、独自性を意味します。嚙み砕いて説明すると「さまざまな個性をもつ他者・社会との関わりにおける自分らしさ」であり、自分1人でつくるものではなく、日々の積み重ねや対人関係によってつくられていくものとなります。
identityの意味(2)身分・身元
identityのもう1つの意味が、身分・身元です。分かりやすく言うと「存在や身分の証明」となります。サイトのログイン時に必要となるユーザーIDの「ID」は、「Identity Document」の略称であることを考えると、その意味がより深く理解できるでしょう。
日本語で言うアイデンティティも、英語表記のidentityとその意味に大きな違いはありません。また、英語表記と同様に2つの意味をもっていることも特徴です。
広辞苑では、アイデンティティの意味として下記のように記載されています。
アイデンティティー【identity】
①人格における存在証明または同一性。ある人が一個の人格として時間的・空間的に一貫して存在している認識をもち、それが他者や共同体からも認められていること。自己同一性。同一性。
②ある人や組織がもっている、他者から区別される独自の性質や特徴。「企業の―を明確にする」
(引用:広辞苑「アイデンティティー【identity】」引用日2023/06/24)
日本語表記のアイデンティティは、存在・身分証明よりも「自己同一性」や「個人の属性・特徴」という側面がやや強くなっています。自分が自分に対してもっている考え方・あり方や、他者からも認められる自分自身を表現できるもの、と捉えておくとよいでしょう。
アイデンティティという言葉は、アメリカの精神科医であるエリク・H・エリクソンによって提唱されました。
不遇な境遇で育ったことから心理学の研究の道を進んだエリク・H・エリクソンは、人間の発達を8つの段階に分けた上で、青年期に獲得すべきものを「アイデンティティ」と名付け、概念化させました。
エリク・H・エリクソンは、「幼少期から青年期にかけて他者とのコミュニケーションを重ねることで、アイデンティティは確立される」と考えていました。そしてこの考え方は、エリク・H・エリクソンが亡くなって30年ほど経つ現在でも受け継がれています。
アイデンティティという言葉の意味をより詳しく理解するためにも、ここではアイデンティティの例文をいくつか紹介します。例文を参考に、アイデンティティの正しい使い方を学びましょう。
アイデンティティは、単品で使用するだけでなく、別の言葉とセットで使用されることも多々あります。掛け合わせるほかの単語によって具体的な意味も異なるため、アイデンティティという言葉についてより詳しく知るためにも、関連語もチェックしましょう。
最後に、アイデンティティの関連語を5つ紹介します。
ナショナルアイデンティティとは、人々が自分の国や民族の個性・役割に対してもつ意識のことです。国民意識・国民的アイデンティティとも呼ばれます。
「日本人はどのような性質をもつ存在であるべきなのか」といった規範や、「アメリカ人はどのような特性があり、どのような状況や環境に置かれているのか」という自己認識は、すべてナショナルアイデンティティとなります。
例えば、オリンピックやワールドカップなどの大きな試合が日本で開催される場合、日本人は自国に対して意識が高まったり、国民としての一体感が高まったりするでしょう。これは、ナショナルアイデンティティが確立されている状態と言えます。
アイデンティティクライシスとは、自己同一性が喪失した状態、いわゆる自己喪失のことです。
「社会における自分の存在価値が見出せない」「自分はどういう人間で、何をしたいのか分からない」といった精神状態に陥り、仕事や他人との関係がうまくいかないことから無気力になったり、うつ状態になったりする可能性もあります。
なお、アイデンティティを提唱したエリク・H・エリクソンは、「アイデンティティクライシスは青年期ならではの課題であり、一過性の経験であることがほとんど」と述べています。
ジェンダーアイデンティティとは、本人が認識する自分自身の性別、いわゆる性自認のことです。ジェンダーアイデンティティは、基本的に幼少期に形成されると言われています。ほとんどの方にとって、ジェンダーアイデンティティは出生時の解剖学的な性別と一致しているものの、中には一致していない方も多いでしょう。
近年では、LGBTQなど性的マイノリティの理解が広まっており、出生時の解剖学的な性別と本人が認識する自分自身の性別が異なっている方でも、ジェンダーアイデンティティを表現しやすくなりました。
コーポレートアイデンティティとは、企業の独自性やブランド力、存在価値のことです。企業のブランドロゴや企業理念、さらにコーポレートカラー、ブランドシンボルなど、あらゆる要素から構成されます。英語表記である「Corporate Identity」のそれぞれの頭文字をとって、「CI」とも呼ばれています。
ビジネスにおいては、自社の存在を他社や消費者に認識させ、社会的信頼性を高めるための経営戦略・ブランド戦略の1つとなっています。
アイデンティティポリティクスとは、共通する特定のアイデンティティをもった集団が結束し、集団を構成するアイデンティティの社会的承認を求める運動のことです。ニュースで見るような、特定の人種やジェンダーをテーマにした海外での政治的運動・デモ活動は、このアイデンティティポリティクスにあたります。
アイデンティティポリティクスは、民族差別や性的差別など、人権における社会的な不当・不遇を受けている集団によって行われることが多いことも特徴です。アイデンティティポリティクスによって共通のアイデンティティをもった人たちの存在意義が強調されるだけでなく、アイデンティティの社会承認を得られる可能性もあります。
アイデンティティは、英語の「identity」から生まれた外来語です。主な意味は自己同一性や主体性、つまり「さまざまな個性をもつ他者・社会との関わりにおける自分らしさ」ですが、英語圏においては「自分の身元・身分の証明」としても用いられます。
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